臨床研究

99mTc04-シンチグラフィの適応についての後方視的観察研究

1.臨床研究について
 九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。このような診断や治療の改善の試みを一般に「臨床研究」といいます。その一つとして、九州大学病院小児外科では、現在99mTc04-シンチグラフィという検査(以下、同検査)を受けた患者さんを対象として、同検査を受けるきっかけとなった症状や疑われた疾患に応じた同検査の有用性を検討する「臨床研究」を行っています。
  今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2025年3月31日までです。
2.研究の目的や意義について 
 小児の消化管出血(吐血や下血、血便などの症状を指します)は短時間の間に状態が悪化することが多く、また原因となる病気が様々であり、検査によっては眠らせたりしないとできない検査があるため、その診断も困難です。このような消化管出血の原因で重要な病気の1つにメッケル憩室があります。
 ヒトの胎児のごく初期には卵黄管という管が臍帯(へその緒)と小腸との間に一時的に発生しますが、この卵黄管はまもなく消えてしまいます。ところが、卵黄管が消えずに残ったときにメッケル憩室になります。1~4%の割合で認められるといわれますが無症状のことも多いです。半数程度では、メッケル憩室の中に本来ないはずの胃酸を分泌する胃の粘膜(異所性胃粘膜)や、消化液を分泌する膵臓の組織(異所性膵組織)が紛れ込むことがあり、これらによって分泌された胃酸などが腸の粘膜を傷つけ潰瘍を作り、出欠の原因となります。他にもメッケル憩室は腸重積や腸閉塞、炎症など様々な病態の原因となります。
 このメッケル憩室を診断する際によく行われる検査の1つに同検査があります。同検査は胃の粘膜の細胞に取り込まれる薬を注射し、それを体の外から撮影することで体の中にある胃の粘膜を特定することができます。この検査で本来胃がある場所以外に薬が集まっていれば、異所性胃粘膜が疑われます。このため、異所性胃粘膜を伴うメッケル憩室を間接的に診断することが可能です。特にメッケル憩室が原因で消化管出血が起きている場合は、そこに異所性胃粘膜があることが多いので、消化管出血に対しては同検査が良く行われます。また、消化管出血以外の症状の際もメッケル憩室が疑われる場合には、異所性胃粘膜の存在に期待し同検査を行うことがあります。また、メッケル憩室以外にも異所性胃粘膜を伴う重複腸管などの病気の診断に同検査を用いることもあります。
 しかしながら、消化管出血以外の症状を伴うメッケル憩室では異所性胃粘膜があるとは限らないので、同検査の有効性ははっきりしていません。また、消化管出血についてもメッケル憩室以外の原因疾患も多く存在し、一般的にシンチグラフィという検査は緊急で行える検査ではないため、消化管出血に対する同検査の位置づけについても議論の余地があります。
 本研究の目的は同検査が実際にどのような場合に行われているかを明らかにし、同検査が行われた症状毎に同検査の感度・特異度を求め、同シンチの有用性を明らかにすることです。メッケル憩室が疑われる場合の症候毎の、特に消化管出血時の診断における同検査の位置づけについても考察し、診断アルゴリズムの作成も目指します。
 また、同検査は検査前にH2ブロッカー(胃酸を抑制するお薬。ガスターなどが代表的)を投与することで診断率が向上するとの報告もあり、H2ブロッカー投与による診断率の変化についても検討いたします。
3.研究の対象者について 
 2003年1月1日から2019年12月31日の間に、当院において同検査を受けられた方が対象です。但し検査時の年齢が18歳未満の方に限ります。対象となる方は全部で約150名となります。
 研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。
4.研究の方法について
 この研究を行う際は、カルテより以下の情報を取得します。この情報から99mTc04-シンチグラフィ検査を行われた方の特徴を分析し、症状毎に分類しそれぞれの感度・特異度を解析します。
 
 〔取得する情報〕
99mTc04-シンチグラフィ検査実施時の年齢・体重・身長、性別、基礎疾患、検査の日付、検査時の主症状および検査理由、症状出現から検査までに期間、検査時の病名(疑い病名を含む)、検査前のH2blocker投与の有無、検査の結果、最終診断、治療内容、手術(審査腹腔鏡および試験回復を含む)を行った場合はその手術所見および病理所見、他検査(消化管造影、消化管内視鏡、エコー、CTなど)の実施の有無とその結果
5.個人情報の取扱いについて 
 研究対象者のカルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
 また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
 この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院生殖病態生理学教授・加藤聖子の責任の下、厳重な管理を行います。
 ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。
6.試料や情報の保管等について
〔情報について〕
 この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野において九州大学大学院医学研究院生殖病態生理学教授、加藤聖子の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
 
 また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。
7.利益相反について 
 九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
 本研究に関する必要な経費は部局等運営費でまかなわれ、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
 
 利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
 
利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)
8.研究に関する情報や個人情報の開示について
 この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
 また、ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。
9.研究の実施体制について 
この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所
(分野名等)
九州大学大学院医学研究院小児外科学分野
九州大学病院小児外科
研究責任者 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 講師   吉丸耕一朗
研究分担者 九州大学病院総合周産期母子医療センター 准教授  松浦俊治
九州大学大学院医学研究院保健学部門   講師   宮田潤子
九州大学病院小児外科          助教   小幡聡
九州大学病院総合周産期母子医療センター 助教   高橋良彰
九州大学病院救命救急センター      助教   近藤琢也
九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 大学院生 河野 淳
10.相談窓口について
この研究に関してご質問や相談等ある場合は、事務局までご連絡ください。
事務局
(相談窓口)
担当者:九州大学大学院医学系学府小児外科学分野 
大学院生 河野 淳
連絡先:〔TEL〕092-642-5573(内線5573)
    〔FAX〕092-642-5580
メールアドレス:ped-surg@pedsurg.med.kyushu-u.ac.jp
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