臨床研究

総排泄腔関連疾患患者と家族に対する支援体制構築に向けた、 患者・家族・支援者の困難とニーズに関する縦断的調査研究

1.観察研究について
 九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院小児外科では、現在、総排泄腔遺残症と総排泄腔外反症の患者さんを対象として、必要な支援に関する「観察研究」を行っています。
 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2026年12月31日までです。
 
2.研究の目的や意義について 
 総排泄腔遺残症と総排泄腔外反症(以下、本疾患)は胎生期に尿路・腸管・(女性の場合)腟が分離不全を来した先天的難治性稀少泌尿生殖器疾患で、本邦登録患者数は689例(総排泄腔遺残症466例、総排泄外反症223例(2014年統計))1)とされています。本疾患では新生児期から思春期あるいは成人期にかけて、尿道・肛門・腟の形成手術を含め、長期にわたる複数回の手術や処置を要する他、多くの方が排泄・性機能障害などの機能障害を合併したまま成人期に至ります。このため、本疾患患者さんのご家族は、患者さんの新生児期(出生前診断例では胎生期)から移行期にかけて、複数回の手術や経時的に変化する医療的ケアに翻弄されながら患者さんの傍に寄り添うこととなります。また、患者さんご本人は幼少期より複数回の手術治療を経験し、医療的ケアを必要とし続け、就学・就職に支障を来すことも多く、思春期以降にも継続する排泄・性機能障害により、恋愛・性交・結婚・月経・妊娠・出産等、生涯にわたって、ライフイベントの一つ一つで困難に遭遇することがあります2)
 本疾患は稀少な疾患であり、医学的あるいは看護学的研究は進んでいないため、患者さんもご家族も多大な自助努力を余儀なくされています。この現状に対して、胎生期から成人期までの切れ目のない、多くの方々に恩恵を受けていただける支援体制の構築が急務であると考えています。
 また、稀少な本疾患は治療に従事した経験を持つ医療従事者が少なく、認知度も低い現状があります。本疾患の患者さんは年齢を追うごとに、多くの診療科、多くの職種による幅広い支援が必要でありますが、その支援体制が整備されていない現状では、支援を充分に提供できていないことによる支援者(医療・行政・教育関係者等)の困難感についての声もあります。
 そこで、九州大学病院小児外科では、アンケート調査を行うことによって、総排泄腔遺残症と総排泄腔外反症の患者さん・ご家族・支援者のニーズや意識を明らかにしたいと考えています。さらに、毎年、同様のアンケートを施行し、経時的変化について解析することで、支援の効果や参加者の意識の変化の分析も併せて行いたいと考えています。この結果を広く報告することで、支援の必要性を周知する他、患者さん・ご家族と支援者のお互いのニーズと意識を共有することで、患者さん・ご家族と支援者の共同による支援体制構築を促進することを目指すものです。

(参考文献)
1)Kubota M: The current profile of persistent cloaca and cloacal extrophy in Japan: the results of a nationwide survey in 2014 and a review of the literature: Pediatr Surg Int 33(4), 505-12, 2017
2)林下里見, 濵田裕子, 宮田潤子, 藤田紋佳, 森口晴美, 伊崎智子, 加藤聖子, 田口智章: 総排泄腔遺残症患者の体験 継続的・包括的支援体制の構築に向けて. 木村看護教育振興財団看護研究集録28, 84-111, 2021
 
3.研究の対象者について
 2021年2月27日、2021年9月25日に開催された排泄腔関連疾患市民公開講座・交流会でアンケートに回答された方145名および、オンライン開催予定の総排泄腔関連疾患市民公開講座および交流会に参加する、①総排泄腔関連疾患をもつ患者、②総排泄腔関連疾患をもつ患者の家族、③支援者(医療・行政・教育関係者)100名を対象としています。
 
4.研究の方法について
この研究を行う際は、対象者がご回答いただいたアンケート回答より以下の情報を取得します。
 〔取得する情報〕
<患者さん・ご家族に対して>
年齢、性別、居住地区、通院している診療科、通院頻度、日常における困難とニーズ、ピアサポートに関する意識とニーズ
<支援者に対して>
経験年数、性別、居住地区、職種、本疾患患者さんへの支援経験、支援における困難とニーズ

 以上により得られたデータを用い、本疾患患者さん、ご家族、支援者の本疾患に関する困難とニーズについて分析します。
 
5.個人情報の取扱いについて 
 研究対象者の情報をこの研究に使用する際には、容易に研究対象者が特定できる情報を削除して取り扱います。この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
 この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野・教授・田尻達郎の責任の下、厳重な管理を行います。
 
6.試料や情報の保管等について
〔情報について〕
 この研究において得られた研究対象者の情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野において同分野教授・田尻達郎の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
 また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。
 
7.利益相反について
 九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
 本研究に関する必要な経費は部局等運営経費ならびに科学研究費補助金であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)
 
8.研究に関する情報の開示について
 この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
 
9.研究の実施体制について
この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所 九州大学病院小児外科
九州大学大学院医学研究院小児外科学分野
九州大学大学院医学研究院保健学部門看護学分野
研究責任者 九州大学大学院医学研究院保健学部門看護学分野・講師 宮田 潤子
研究分担者 九州大学大学院医学研究院保健学部門看護学分野准教授 植木 慎悟
九州大学大学院医学研究院保健学部門看護学分野助教 藤田 紋佳
九州大学病院小児外科助教 小幡 聡
九州大学病院総合周産期母子医療センター助教 桐野 浩輔
10.相談窓口について
この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。
 
事務局
(相談窓口)
担当者:九州大学大学院医学研究院保健学部門看護学分野・講師・宮田潤子
連絡先:〔TEL〕092-642-5573
      〔FAX〕092-642-5580
メールアドレス:ped-surg@med.kyushu-u.ac.jp
 
 
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