臨床研究

年長児胆道閉鎖症に対する生体肝移植におけるドナーリスク評価に関する検討

1.観察研究について
 九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院小児外科では、現在胆道閉鎖症の患者さんを対象として、ドナー因子を考慮した思春期以降の移植時期に関する「観察研究」を行っています。
 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2024年3月31日までです。
2.研究の目的や意義について
 胆道閉鎖症は小児生体肝移植の原疾患として最も多い疾患である。胆管の閉塞による胆汁うっ滞が進行し、未治療の場合、進行性の胆汁性肝硬変に移行し2歳までに死亡するケースが多いです。1957年に葛西が肝門部空腸吻合術(葛西術)を発表し、以後プロトコールを改善することで、現在では早期に葛西手術を受けた本症児の7割が一旦は減黄し、長期生存が期待できるまでになり、思春期、成人での胆道閉鎖症患者が見られるようになっています。しかしながら、この時期に至ってもなお、門脈圧亢進症を始めとする種々の難治性の遠隔期合併症が続発し、最終的に肝移植を要する患者さんがおられます。しかし、成人に達した患者さん全員が肝機能障害をきたすとは限らず、至適移植時期に関しては定説がありません。また、思春期、成人期での移植は、患者さんが成長していることもあり、右葉グラフトを必要とする症例も少なからずあります。
 小児に対する移植では、そのレシピエントの年齢や体格に応じてグラフト選択を慎重に行う必要があります。すなわち、移植をする時期の決定がドナーの術式選択にも影響を及ぼします。小児期の様々な年齢層で肝移植を要する可能性のある胆道閉鎖症において、様々な移植時期においてもドナーおよびレシピエントの安全性を担保することが必要不可欠となります。
 生体肝移植における右葉グラフトの使用は近年の報告ではリスクが少ないとする報告もありますが、日本からの報告では左様グラフトより右葉グラフトを用いた場合の方がドナーの合併症の頻度も高く、入院日数も長いことが示されています。グラフト選択によるドナーおよびレシピエントのリスク因子を考慮することは重要と考えられます。
 そこで、本院で1996年1月1日〜2020年4月30日に初回生体肝移植を施行した12歳以上のBA患者および対応するドナーの情報を診療録から後方視的に検討し、現在の小児肝移植におけるグラフト選択の現状について調査するとともに、右葉グラフトを用いた症例の臨床的特徴や、ドナー、レシピエントの周術期リスクを軽減するための移植前後の様々な因子について検討したいと考えています。
 
3.研究の対象者について
 九州大学病院小児外科において1996年1月1日〜2020年4月30日までに胆道閉鎖症の診断で生体肝移植を受けられた方、及び、臓器提供をしてくださったドナー、25名を対象にします。
  研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。
4.研究の方法について
 この研究を行う際は、カルテより以下の情報を取得します。取得した情報と使用したグラフトの関係性を分析し、思春期以降の胆道閉鎖症患者の至適な生体肝移植時期を検討します。
 〔取得する情報〕
疾患名、性別、肝移植時期、手術時年齢、身長、体重、手術内容(手術時間、温虚血時間、冷虚血時間)、術中所見(門脈、肝動脈、肝静脈各々の血流速度)、術後早期合併症と晩期合併症、予後
血液検査結果(WBC, RBC, Hb, PLT, TP, Alb, T-Bil, D-Bil, AST, ALT, ALP ,γGTP, ChE, BUN, Cr, CRP, PT, PT-INR, APTT)
免疫検査結果(血液型)
画像検査結果(胸腹部レントゲン写真、透視;血管・消化管、CT、術中胆道造影)
 
5.個人情報の取扱いについて
 研究対象者の検査結果、カルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
 また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
 この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野・教授・田尻 達郎の責任の下、厳重な管理を行います。
 ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。
 
6.試料や情報の保管等について
〔情報について〕
 この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野において同分野教授・田尻 達郎の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
 
 また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。
 
7.利益相反について
 九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
 本研究に関する必要な経費は部局等運営費であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)
 
8.研究に関する情報の開示について
 この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
 
9.研究の実施体制について
この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所 九州大学病院小児外科・九州大学大学院医学研究院小児外科学分野
研究責任者 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 教授 田尻 達郎
研究分担者 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野・准教授・松浦俊治
九州大学大学院医学研究院小児外科学分野・講師・吉丸耕一朗
九州大学大学院医学系学府小児外科分野・大学院生・河野雄紀
九州大学大学院医学系学府小児外科分野・大学院生・鳥井ケ原幸博
九州大学大学院医学系学府小児外科分野・大学院生・梶原啓資
九州大学大学院医学系学府小児外科分野・大学院生・白井剛
九州大学大学院医学系学府小児外科分野・大学院生・内田康幸
 
 
10.相談窓口について 
この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。
事務局
(相談窓口)
担当者:九州大学大学院医学系学府小児外科分野 大学院生 鳥井ヶ原幸博
連絡先:〔TEL〕092-642-5568
      〔FAX〕092-642-5580
メールアドレス:ped-surg@med.kyushu-u.ac.jp
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