臨床研究

小児がんにおける血中脂肪酸分画の探索的研究

1.観察研究について
 九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院小児外科では、現在小児がんの患者さんを対象として、血中脂肪酸分画に関する「観察研究」を行っています。
 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2025年3月31日までです。
 
2.研究の目的や意義について 
 近年,小児がん患者の予後は飛躍的に改善しており、予後改善の背景には、抗がん剤や造血幹細胞移植といった治療法の進歩がありますが、好中球減少時の感染症対策や栄養療法の役割も重要です。悪性腫瘍の種類や進行状態によって患児の栄養状態は大きく左右されます。小児がんはすでに診断時に栄養不良が6~50%に認められ、さらに化学療法や放射線治療造血幹細胞移植などの治療により、嘔気・嘔吐,粘膜障害などの副作用が出現し、栄養状態のさらなる悪化や体重減少をひきおこします。栄養状態の悪化は感染症による治療の中断、治療薬の減量につながります。栄養状態を改善し、治療中断や減量を回避することは治療中のQOL向上だけでなく生命予後を改善することが期待できます。
 脂質は熱量源としても利用されるが一部は種々のサイトカインに合成されて生体の機能制御に利用されます。多価不飽和脂肪酸の中でもω-3系脂肪酸は抗炎症・免疫賦活作用を有し、悪性腫瘍時の過剰に生成される炎症性サイトカインを抑制し、悪液質を軽減する効果が期待されています。また、ω-3系脂肪酸は脳・神経系の発達・維持に必要で、brain growth spurtにある新生児・乳児期には不可欠な栄養素であり、同年齢の悪性腫瘍患児の栄養管理では必須と考えられます。
 そこで、今回小児外科では、小児がんの患者さんを対象に血中脂肪酸分画値を解明することを目的として、本研究を計画しました。本研究を行うことで小児がんの病態における予後予測因子となりうる新たなバイオマーカー探索および適切な栄養管理による患者QOLの向上につながると考えます。
 
3.研究の対象者について
 この研究では小児がんの患者さんと健常児との比較を行うために、許可日~2025年3月31日迄の小児がんの患者さん30名と、健常児として下記の先行研究に参加した30名の方から取得した情報を解析に利用させていただく予定です。
許可番号:2022-81
 課題名:乳幼児、小児期における血中脂肪酸分画の探索的研究
 許可期間:2020年10月 30日~2023年3月31日
 本研究に使用する情報の取得期間:2020年10月 30日~2022年10月31日
 
 研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。
 
4.研究の方法について
この研究を行う際は、カルテより以下の情報を取得します。
〔取得する情報〕
年齢、性別、身長、体重
出生歴(在胎週数、出生体重),母乳栄養または人工栄養の有無,食事習慣(魚の摂取頻度)
 脂肪酸分画の測定結果と取得した情報の関係性を分析し、小児がんの血中脂肪酸値に対する影響を明らかにします。
 
5.個人情報の取扱いについて
 研究対象者の測定結果、カルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
 また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
 この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野・教授・田尻 達郎の責任の下、厳重な管理を行います。
 ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。
6.試料や情報の保管等について
〔情報について〕
 この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学九州大学大学院医学研究院小児外科学分野において同分野教授・田尻 達郎の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
 
 また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。
7.利益相反について 
 九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
 本研究に関する必要な経費はゴールドリボン研究助成金であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
 利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)
 
8.研究に関する情報の開示について
 この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
9.研究の実施体制について
この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所 九州大学病院小児外科
九州大学大学院医学研究院小児外科学分野
研究責任者 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 教授 田尻 達郎
研究分担者 九州大学病院総合周産期母子医療センター・助教 川久保 尚徳
九州大学病院小児外科 助教 福田 篤久
九州大学病院総合周産期母子医療センター・助教 馬庭 淳之介
業務委託先 企業名等:株式会社エスアールエル
所在地:〒163-0409 東京都新宿区西新宿二丁目1番1号 新宿三井ビルディング10F
 
10.相談窓口について
この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。
 
事務局
(相談窓口)
担当者:九州大学病院小児外科 助教 福田 篤久
連絡先:〔TEL〕092-642-5573
    〔FAX〕092-642-5580
メールアドレス:ped-surg@med.kyushu-u.ac.jp
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