臨床研究

生体肝移植における胆道再建方法に関する後方視的研究

1.観察研究について
 九州大学病院では, 最適な治療を患者さんに提供するために, 病気の特性を研究し, 診断法, 治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果, 疾病への治療の効果などの情報を集め, これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして, 九州大学病院小児外科では, 現在, 生体肝移植を受けられた患者さんを対象として, 性別, 診断名と術式, 術後合併症, ドナーの特徴との関連性, 生命予後, 術前術後の血液検査や画像検査の結果などの臨床的特徴に関する「観察研究」を行っています。
 今回の研究の実施にあたっては, 九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て, 研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は, 2027年11月30日までです。
2.研究の目的や意義について 
 小児生体肝移植は、末期肝疾患、代謝性疾患、肝芽腫の小児患者にとって救命治療の選択肢として確立されてきました。移植ではドナーからいただいた肝臓グラフトの門脈・肝静脈・肝動脈を患者本人のものと吻合することで肝臓への血流を確保します。そして最後に、肝臓から排出される胆汁の通り道である、胆管の再建を行います。この胆管の再建方法は、従来、空腸をY字型に形成し直し(Roux-en-Y法)、挙上した空腸を肝門部の胆管と吻合する、肝門部空腸吻合が行われてきました。特に小児では、胆道閉鎖症を原因として生体肝移植を行う症例が多く、患児の胆管が残っていないことが多いためです。しかしながら、近年、胆道閉鎖症以外の疾患にも生体肝移植が適応されるようになり、胆管の再建方法として、グラフトの胆管と患者の胆管を吻合する、胆管胆管吻合が見直されるようになりました。胆管同士を繋げることで、元々の胆汁の流れ方、腸管の流れ方が維持できるようになり、腸管からの腸液の逆流などによって起こる胆管炎が防がれることが想定されます。また、腸管を手術中にあまり扱わなくて良いことから、腸管に関わる合併症のリスクを減らせることも利点の一つであることが考えられます。一方で、小児の胆管は成人と比較すると細いことも多く、術後に繋げた部分の胆管が狭くなったり、吻合部から胆汁が漏れてしまったりするリスクも考えられます。また、グラフトの位置によっては胆管同士を繋げるとせっかく繋いだ胆管や血管がねじれてしまい、十分な血液が流れなかったり、胆汁がうまく排出できなかったりといったトラブルに繋がりかねません。当院では、胆管胆管吻合が可能な疾患の患者さんでは、一人一人で胆管の状態やグラフトの位置をはじめとした術中所見を中心に検討し、胆管吻合方法を決定していますが、胆管吻合の方法の違いによるリスク、ベネフィットに関しては過去の報告も少なく、特に小児においては、十分に議論がなされているとは言い難いのが実情です。
 そこで, 今回, 九州大学小児外科で生体肝移植での加療歴のある患者さんを対象に疾患名, 性別, 年齢, 身長,体重,手術中の所見, 術後早期合併症と晩期合併症, 手術前後の血液検査結果, 生存・グラフト定着の有無について診療情報を収集し,胆管吻合方法によるリスク・ベネフィットに関しての検討を行うことを目的として, 本研究を計画しました。
 
3.研究の対象者について
 九州大学病院小児外科において1996年1月1日~2022年4月30日に当院で初回生体肝移植を行った患者さんのうち,胆道閉鎖症以外の疾患で移植を行った46名を対象にします。研究の対象者となることを希望されない方やその保護者の方は, 下記連絡先までご連絡ください。
 
4.研究の方法について
 この研究を行う際は, カルテより下記の情報を取得します。胆管縫合方法ごとに各項目を評価し、合併症の発生率や生存率に差が生じるかどうかの評価をします。
〔取得する情報〕
 疾患名, 性別, 年齢, 臨床所見(症状,身長・体重), ドナー年齢,血液型,ドナー血液型, 術式, 術中所見(胆管径, 手術時間,吻合後血流速度を含む), 術後早期合併症と晩期合併症,血液生化学検査所見(WBC, RBC, Hb, PLT, AST, ALT, ALP, T-Bil, D-Bil,γ-GTP,PT,PT-INR),画像検査結果(CT,胆管造影検査),再移植の有無と再移植時期, 予後
 
5.個人情報の取扱いについて
 研究対象者の血液や病理組織, 測定結果, カルテの情報をこの研究に使用する際には, 研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し, 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は, 同分野の職員によって入室が管理されており, 第三者が立ち入ることはできません。
 また, この研究の成果を発表したり, それを元に特許等の申請をしたりする場合にも, 研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は, 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野・教授・田尻 達郎の責任の下, 厳重な管理を行います。
 ご本人等からの求めに応じて, 保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は, ご連絡ください。
 
6.試料や情報の保管等について
 この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し, 研究終了後は, 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野において同分野教授・田尻 達郎の責任の下, 10年間保存した後, 研究用の番号等を消去し, 廃棄します。
 また, この研究で得られた研究対象者の情報は, 将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで, 前述の期間を超えて保管し, 将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には, 改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し, 承認された後に行います。
 
7.利益相反について 
 九州大学では, よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に, 企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており, 国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で, 産学連携を進めた場合, 患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
 本研究に関する必要な経費ありませんが, 必要に応じて部局等運営経費を用いて研究を行います。研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は, 下記の窓口へお問い合わせください。
利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)
 
8.研究に関する情報の開示について
 この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や, この研究の独創性の確保に支障がない範囲で, この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は, ご連絡ください。
 
9.研究の実施体制について
この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所 州大学病院小児外科
九州大学病院総合周産期母子医療センター
九州大学大学院医学研究院 小児外科学分野
研究責任者 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 教授 田尻達郎
研究分担者 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 教授 田尻達郎
九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 准教授 松浦俊治
九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 助教 栁 佑典
九州大学病院総合周産期母子医療センター 助教 川久保尚徳
九州大学大学院医学系学府小児外科学分野 大学院生 鳥井ヶ原幸博
 
10.相談窓口について
この研究に関してご質問や相談等ある場合は, 下記担当者までご連絡ください。
 
事務局
(相談窓口)
担当者:九州大学大学院医学系学府 大学院生 鳥井ヶ原幸博
連絡先:〔TEL〕092-642-5573(内線5573)
    〔FAX〕092-642-5580
メールアドレス:ped-surg@med.kyushu-u.ac.jp
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