臨床研究

嚢胞型胆道閉鎖症と先天性胆道拡張症の臨床的・組織学的所見に関する観察研究

1.観察研究について
 九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院小児外科では、現在、生後180日未満に手術を施行された胆道閉鎖症(嚢胞型)の患者さんと先天性胆道拡張症の患者さんを対象として、両疾患の臨床所見と手術に摘出した組織所見に関する「観察研究」を行っています。
 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2027年12月1日までです。
 
2.研究の目的や意義について 
 胆道閉鎖症という病気は、肝臓から産生される胆汁の通路である胆管が胎児期から乳児早期にかけて閉じてしまい、放置すると胆汁が停滞することで進行性の肝障害(肝硬変)をきたします。主な症状は、胆汁が腸に排出・消化されないため、新生児期・乳児早期のからだの黄疸や、便が白くなる灰白色便などで本疾患が疑われます。
 胆道閉鎖症の治療法としては、手術による外科的治療しかありません。閉塞している胆管を切除し、肝臓に腸をつなげる肝門部空腸吻合による手術になります。この方法で患者さんの症状や肝障害が軽減されますが、全体の約4-5割の患者さんは、黄疸が改善しない場合、胆管炎を繰り返す場合、肝障害に伴う門脈圧亢進症を強くきたす場合などで、患者さん自身の肝臓を他の方の肝臓と入れ替える肝移植を必要とします。
 一方、先天性胆道拡張症は、肝臓と腸をつなぐ胆管が先天的に拡張を来す疾患で、その多くに胆管と膵臓から産生される膵液の通路である膵管とが合流してしまう膵・胆管合流異常を合併し、膵液と胆汁が膵管内および胆管内で混ざり・停滞することにより膵炎・胆管炎・胆管結石・肝障害・胆管癌を発症する病気です。新生児期・乳児早期には、先天性胆道拡張症も拡張した胆管などにより、黄疸や灰白色便など胆汁排泄障害による症状と肝障害を来すため、診断次第、胆道閉鎖症と同様に、肝外胆管切除と肝管腸吻合の手術を必要とし、場合によっては進行性の肝障害で肝移植も必要となります。
 胆道閉鎖症においては、その閉じてしまった胆管の一部がふくろ(嚢胞)状となるタイプ(嚢胞型胆道閉鎖症)があり、新生児期・乳児早期では、黄疸・灰白色便などの症状や嚢胞状の胆管は、嚢胞型胆道閉鎖症と先天性胆道拡張症を診断するのが非常に難しい場合があります。
 そこで、小児外科では、生後180日未満に手術を施行された嚢胞状胆道閉鎖症と先天性胆道拡張症の患者さんを対象として、(1)患者さんの術前・術後の臨床所見、(2)手術時の摘出標本の組織所見を調査することで、両疾患の類似点と相違点、そして、適切な治療指針を明らかにすることを目的として、本研究を計画しました。
3.研究の対象者について
 九州大学病院小児外科において1991年1月1日から2022年12月1日までに嚢胞型胆道閉鎖症(18名)や先天性胆道拡張症(18名)の診断で手術を受けられ、すでに組織として肝臓(生検または全肝)・胆管・胆嚢を切除された36名を対象にします。
 また、この研究では、生後180日以降に手術を施行された小児肝疾患においても解析を行うために、下記の先行研究に参加した約180名の方の組織と診療情報も、臨床所見と組織所見の解析に利用させていただく予定です。
許可番号:2021-90
課題名:外科的治療を要する小児肝疾患の臨床的特徴に関する観察研究
許可期間:2021年5月31日-2026年3月31日
本研究に使用する試料・情報の取得期間:1991年1月1日-2022年12月1日
 
 研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。
 
4.研究の方法について
 この研究を行う際は、カルテより以下の情報を取得します。また、保管されている摘出組織(肝臓・胆管・胆嚢)を用いて、標本(プレパラート)を作製し、顕微鏡で観察します。測定結果と取得した情報の関係性を分析し、嚢胞型胆道閉鎖症と先天性胆道拡張症における、組織所見に基づいた臨床所見、術後経過などから、両疾患における類似点や相違点、そして、適切な治療指針を明らかにします。
〔取得する情報〕
 ・患者;出生前診断の有無、疾患指摘時期、娩出方法、出生時期、出生体重、アプガースコア、年齢、性別、体重、診断名、診断の方法、血液データと病変部(胆管)の経時的変化、手術の方法、合併症の有無、臨床検査と身長・体重の経時的変化、外来診察・再入院・再手術の経過、生命と臓器予後(自己肝生存率と肝移植の時期)
 ・患者の臨床検査情報は、以下の検査結果情報を取得する。
血液検査結果
 ・血算・生化学・凝固 (WBC, RBC, Hb, PLT, TP, Alb, T-Bil, D-Bil, AST, ALT, ALP ,γGTP, ChE, BUN, Cr, CRP, ヒアルロン酸, TBA, NH3, BNP, PT, PT-INR, APTT, AFP, PIVKAⅡ, MMP-7, M2BPGi, FIB-4 index, ALBI score, APRI score)
 ・アミノ酸分画、脂肪酸分画、微量元素、薬剤血中濃度
感染症検査結果(細菌およびウイルス)
免疫検査結果(血液型、HLA検査、フローサイトメトリー)
生化学検査結果(尿、腹水、胆汁、摘出組織内容液)
画像検査結果(超音波、Xp、CT、MRI、透視;血管・消化管・胆管、シンチグラフィー)
病理標本結果(摘出組織-肝生検または全肝、胆管、胆嚢)
5.個人情報の取扱いについて
 研究対象者の血液や病理組織、測定結果、カルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
 また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野・教授・田尻 達郎の責任の下、厳重な管理を行います。
 ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。
6.試料や情報の保管等について
〔試料について〕
 この研究において得られた研究対象者の血液や病理組織等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野において同分野教授・田尻 達郎の責任の下、5年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
〔情報について〕
 この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野において同分野教授・田尻 達郎の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
 
 また、この研究で得られた研究対象者の試料や情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。
 
7.利益相反について 
 九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
 本研究に関する必要な経費は九州大学大学院医学研究院小児外科学分野の部局等運営費であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)
 
8.研究に関する情報の開示について
 この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
 
9.研究の実施体制について
この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所 九州大学病院小児外科
九州大学大学院医学研究院小児外科学分野
九州大学大学院医学研究院形態機能病理学分野
研究責任者 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 教授 田尻 達郎
研究分担者 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 准教授 松浦 俊治
九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 助教 栁 佑典
九州大学病院小児外科 医員 河野 雄紀
九州大学病院小児外科 医員 玉城 昭彦
九州大学大学院医学系学府小児外科学分野 大学院生 鳥井ケ原 幸博
九州大学大学院医学系学府小児外科学分野 大学院生 梶原 啓資
九州大学大学院医学系学府小児外科学分野 大学院生 内田 康幸
九州大学大学院医学系学府小児外科学分野 大学院生 白井 剛
九州大学大学院医学研究院形態機能病理学分野 教授 小田 義直
九州大学大学院医学研究院形態機能病理学分野 准教授 孝橋 賢一
 
 
10.相談窓口について
この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。
事務局
(相談窓口)
担当者:九州大学大学院医学系学府小児外科学分野 大学院生 白井 剛
連絡先:〔TEL〕092-642-5573(PHS 5570)
    〔FAX〕092-642-5580
メールアドレス:ped-surg@pedsurg.med.kyushu-u.ac.jp
 
 
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