臨床研究

先天性肝線維症・カロリ病肝移植患者の疫学研究

1.観察研究について
 九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院小児外科では、現在先天性肝線維症・カロリ病・カロリ症候群の患者さんを対象として、先天性肝線維症・カロリ病肝移植患者の疫学研究に関する「観察研究」を行っています。
 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2024年3月31日までです。
2.研究の目的や意義について 
 先天性肝線維症とカロリ病はどちらも先天性の肝内胆管拡張症です。先天性肝線維症は一見すると肝硬変に類似していますが、小葉の構造は保たれており、末梢レベルでの肝内胆管の拡張が特徴です。一方で、カロリ病は中枢側の肝内胆管拡張を有し、肉眼で多発性・嚢状の拡張を認め、先天性肝線維症を伴わない ことが特徴的であす。本邦では、先天性肝線維症を伴うものがほとんどであり、それらはカロリ症候群に相当します。本疾患は、多嚢胞性腎疾患の合併頻度が高く、両疾患とも一次絨毛の異常に起因する疾患であることが明らかにされ、絨毛病に分類されるようになりました。肝臓の症状として、繰り返す難治性の胆管炎や門脈圧亢進症を認め、繰り返す吐血・肝肺症候群・抗生剤に反応しない胆管炎などには肝移植が適応とされていました。しかし、治療において明確な 適応基準は定まっておらず、肝移植適応も不確定な要素が多いのが現状です。また、肝移植後も本症に起因する腎障害が進行することも多く、その対応も問題となっています。本研究においては、厚生労働科学 研究費補助金(研究代表者: 仁尾正記、研究課題名「小児期発症の希少難治性肝胆膵疾患における医療水準ならびに QOL の向上のための調査研究」)班が日本肝移植学会から提供された一次調査結果をもとに、各施設で肝移植が施行された患者を対象に、過去・現在の経過情報を集積することで、治療や管理の問題点や予後などを明らかにし、肝移植の適応基準を明確にすることが目的です。
 本症に伴う合併症の中で吐血や敗血症を惹起する胆管炎は生命予後を左右します。しかし、肝移植予後の情報も乏しく、どのような症例に肝移植を適用とするか重要となってきます。本症は長期予後も含め未知な部分が多いため、本研究により本症の実態を把握することで有益な情報を得られる可能性が高く、また得られた結果をもとに、脳死肝移植の適応基準の改訂を行うことが可能になります。
3.研究の対象者について
 九州大学病院小児外科において1999年1月1日~2020年12月31日までに先天性肝線維症・カロリ病・カロリ症候群と診断され、当院に通院や入院をされた方、2名を対象にします。
 研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。
 
4.研究の方法について
 この研究を行う際は、カルテより以下の情報を取得します。
 〔取得する情報〕
 生年月、初診日、肝移植日、肝移植時体重、性別、診断名、診断日、合併症、腎臓情報、肝移植後情報
 国立成育医療研究センターへ研究対象者の情報を郵送にて送付し、詳しい解析を行う予定です。
 得られた結果をもとに、治療や管理の問題点や予後などを明らかにし、肝移植の適応基準を明確にします。
 他機関への情報の送付を希望されない場合は、送付を停止いたしますので、ご連絡ください。
5.個人情報の取扱いについて
 研究対象者のカルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
 また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
 この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野・教授・田尻 達郎の責任の下、厳重な管理を行います。
ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。
 研究対象者のカルテの情報を国立成育医療研究センターへ郵送する際には、九州大学にて上記の処理をした後に行いますので、研究対象者を特定できる情報が外部に送られることはありません。
 
6.試料や情報の保管等について
〔情報について〕
 この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野において同分野教授・田尻 達郎の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
 また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。
 
7.利益相反について 
 九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
 本研究に関する必要な経費は部局等運営費であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
 利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
 利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)
 
8.研究に関する情報の開示について
 この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
9.研究の実施体制について
この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所 九州大学病院小児外科
九州大学大学院医学研究院小児外科学分野
研究責任者 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野准教授 松浦俊治
研究分担者 九州大学大学院医学系学府小児外科学分野 大学院生 内田康幸
九州大学大学院医学系学府小児外科学分野 大学院生 前田翔平
共同研究機関等 機関名 / 研究責任者の職・氏名 役割
①済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科/専門部長・乾 あやの
②東北公済病院/病院長・仁尾正記 
③金沢医科大学小児外科/教授・岡島英明 
④滋慶医療科学大学/教授・別所一彦  
⑤⑤国立成育医療研究センター/病院長・笠原群生
⑥京都大学 
⑦熊本大学 
⑧女子医科大学 
⑨京都府立医科大学
⑩東京大学 
⑪自治医科大学  
⑫埼玉県立小児医療センター 
⑬藤田保険衛生大学 
①研究事務局・データ管理
②調査票結果の総括
③データ解析結果の考察・総括
④データ解析結果の考察
⑤データの解析全般
⑥~⑬情報提供
 
 
10.相談窓口について
この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。
事務局
(相談窓口)
担当者:九州大学大学院医学研究院小児外科学分野・准教授 松浦俊治
連絡先:〔TEL〕092-642-5573
      〔FAX〕092-642-5580
メールアドレス:ped-surg@med.kyushu-u.ac.jp
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