肝胆道・移植

手術が必要な小児の肝臓の病気

大人の肝臓の病気といえば、脂肪肝、アルコール性肝硬変、B型やC型肝炎、肝臓癌など聞いたことがあると思います。
では、小児の肝臓の病気といってピンとくるでしょうか。聞いたことのない病気ばかりだと思いますが、意外にたくさんの種類があります。その中でも、私たち小児外科(小児専門に手術をする外科)が関与する病気は、つまり手術が必要な病気ということになります。手術が必要な肝臓の病気には、胆道閉鎖症、肝腫瘍(肝芽腫や肝細胞癌)、アラジール症候群、先天性門脈欠損症、先天性代謝性疾患(OTC欠損症や糖原病)、自己免疫性肝疾患(自己免疫性肝炎や原発性硬化性胆管炎)、劇症肝炎など様々あります。ほとんどが聞いたことがない病気だと思いますが、私たちは小児科の先生たちと連携しながら、様々な肝臓の病気の診断をし、手術やお薬で治療をしています。
その中でも、最も多いとされているのが胆道閉鎖症という病気です。胆道閉鎖症について詳しくお話します。

胆道閉鎖症

胆道閉鎖症とは、生まれながら(もしくは生まれて1-2か月後に)に胆汁の通り道である胆道が狭窄もしくは、閉塞してしまう病気です。約1万人の赤ちゃんの中に一人の割合で発生し、病気の原因はまだはっきりとはわかっていません。胆汁は、脂肪を消化吸収するために必要な緑色の液体で、肝臓で作られ、胆のうで蓄えられます。食べ物を食べると胆のうが収縮して総胆管という管を通って十二指腸に分泌され、食べ物と混ざります。うんちは胆汁によって色がついています。

そんな胆汁の通り道である胆道が閉鎖してしまうと、胆汁が腸の中に分泌されず、肝臓の中にとどまってしまい、黄疸や灰白色便が出現します。さらに放置すると肝臓の組織が破壊され線維化がすすむ、「胆汁うっ滞性肝硬変」という生命を脅かす状態となってしまいます。世界的にみても、唯一の治療法は手術であり、肝門部空腸吻合術(葛西手術)という方法です。黄疸が良くなる確率は、手術日齢が早いほうが良いといわれており、そのため早期発見早期治療が必要です。診断は、血液検査、尿や便の検査、十二指腸液検査、腹部超音波検査などを必要に応じて組み合わせて行いますが、当院では主に身体所見(黄疸の程度や便の色)、血液検査、腹部超音波検査で疑い、手術での所見で確定診断を行います。当院では年間2-5例の胆道閉鎖症患者の手術をしており、肝臓を専門にした医師もいます。

胆道閉鎖症で手術をしても、黄疸が良くならず、肝硬変が進行する症例もあります。そういった症例には肝移植が必要となります。当院では、消化器総合外科とともに肝移植も行っています。肝移植の適応を早期に見極めるのも非常に重要なことです。

胆道閉鎖症の病型分類(日本小児外科学会ウェブサイトから引用)

生体肝移植

肝移植には生体肝移植と脳死肝移植があります。小児の肝移植は生体肝移植がほとんどを占めております。
生体肝移植とは、病的な肝臓をすべて取り除き、健康な方の肝臓の一部と取り替えるという治療法です。新しい肝臓を受け取る方をレシピエント、肝臓を提供する方をドナーといいます。本邦では1989年に第1例目が行われ、2015年までに8066例の生体肝移植が行われております。その中でも、小児の生体肝移植症例は2795例であり、年間約150例行われております。成人の生体肝移植は、B型肝炎やC型肝炎の薬物治療の発展により、減少傾向でありますが、小児はやや増加傾向にあります。

本邦の生体肝移植症例(日本肝移植研究会のデータから引用)

九州大学では1996年10月に生体肝移植第1例目を行い、その患者さんは胆道閉鎖症のお子さんでした。その後、現在まで108例に対して110回の肝移植を行っております。

生体肝移植の適応となる病気

上述したように、胆道閉鎖症が最も多く、約8割を占めています。その他にも、ウィルスや薬物などが契機となり、急激に肝不全が進行する、劇症型肝不全では、内科的治療に反応しない場合は肝移植となり、全体の約1割を占めております。肝芽腫という肝臓に発生する悪性腫瘍でも肝移植となることがあります。肝芽腫は化学療法が有効な腫瘍であるため、外科的に切除可能であれば手術の前と後に化学療法を行うことで、生存率は良好ですが、切除できないような大きな腫瘍、化学療法が無効な腫瘍に対しては、移植の適応となります。その他にもアラジール症候群、先天性代謝異常症など様々な適応疾患があります。

九州大学小児外科肝移植症例の原疾患(n=108)

1996年10月~2017年7月 108例に対して110回の肝移植術を施行(年齢28生日~33歳)

<2例>:Alagille症候群、門脈欠損、グラフト不全(再移植)、血球貪食症、肝繊維症(新生児例と乳児例)

<1例>:PSC、CPS1欠損症、Wilson病、シトルリン血症、新生児ヘモクロマトーシス

肝移植の成績

日本肝移植研究会の全国登録によりますと、成人例を含めた生体肝移植の累積生存率は1年で84.4%、5年で77.8%、10年で72.5%という結果でした。九州大学小児外科では、1996年10月から2017年11月までで108例(うち脳死肝移植4例)に対して110回の肝移植を行っており、累積生存率は90%と良好な経過を得ています。

生体肝移植の累計生存率(日本肝移植研究会のデータから引用)

乳歯幹細胞を用いた肝再生研究

近年、体内のあらゆる細胞の元となる幹細胞に関する研究が盛んに行われています。幹細胞は障害を受けた肝臓の組織を修復したり、試験管内で肝臓の細胞に分化させて体内に投与することで肝臓の働きを補助することが分かってきており、幹細胞を用いた肝再生医療への期待が高まっています。私たちは、これまで不要なものとして捨てられていた乳歯からとれる幹細胞であるヒト乳歯幹細胞(Stem Cells From Human Exfoliated/Extracted Deciduous Teeth: SHED)に注目し、小児歯科、小児科の研究グループと共同で乳歯幹細胞を用いた肝再生医療の開発研究を行っています。

薬剤性肝硬変モデルマウスに対するヒト乳歯幹細胞(SHED)による肝硬変治療効果

移植したSHEDが肝臓に生着し肝臓の繊維化を軽減した

In vivo hepatogenic capacity and therapeutic potential of stem cells from human exfoliated deciduous teeth in liver fibrosis in mice. Stem Cell Res Ther. 6:171

バイオ3Dプリンターを用いた肝組織構築と移植法開発

バイオプリンターで作製した立体肝組織

In vivo and ex vivo methods of growing a liver bud through tissue connection: Scientific Reports. 2017

肝細胞は個々の細胞がバラバラな状態より、生体内と同様に細胞同士が接着し、細胞極性および細胞間相互作用が維持されるほうが、機能が高レベルで長期維持されることが知られています。そこで、細胞をバラバラな状態で移植する方法より効果が期待される方法として、肝細胞をバイオ3Dプリンターを用いて成型して癒合させ、より大きな立体肝組織を作製して外科的に移植する手法の開発に取り組んでいます。

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