小児腫瘍

小児腫瘍外科グループ

病気に苦しむ患者さんとそのご家族のために

小児悪性腫瘍は「1万人に1人」の疾患と言われています。我々小児外科医が扱う小児悪性固形腫瘍はその中でも更に少なく数十万人から数百万人に1人とされており、いわゆる「希少がん」と位置付けられております。

種類は多岐に渡っており、腫瘍の種類によって外科治療、化学療法、放射線治療などの重要度が異なるため、腫瘍の方針・治療に精通した医師が診療に当たる必要があります。

九州大学小児外科では小児がんの治療に精通した「小児がん認定外科医」が複数名在籍しており、化学療法を担当する小児科医・放射線治療を担当する放射線科医・更に疾患特異的な専門科が存在する場合には該当科と密に連携を取りながら診療を行っております。

手術を担当する小児外科医自身が、症例毎に化学療法や放射線治療を含む治療全体を十分理解し、腫瘍の特性を念頭において長期合併症と20年後の患者さんのQOL(Quality of life)を考慮した外科治療戦略を構築すべきであると考えています。

過去3年間 小児外科腫瘍グループで手術した患者のべ数
2019 2020 2021
神経芽腫群腫瘍 8 15 7
肝悪性腫瘍 9 13 6
腎悪性腫瘍 2 3 4
横紋筋肉腫 2 5 3
その他の悪性固形腫瘍 15 15 14
良性腫瘍 10 17 16
46 65 50

研究に関して

臨床研究

九州大学小児外科におきましては下記治験/臨床研究を単施設/多施設共同で行っております。
いつでもお問い合わせください。

研究名 対象疾患
(1)小児悪性固形腫瘍に対するNK細胞様CD3陰性細胞を用いた医師主導治験(R4年秋から開始予定) 再発難治神経芽腫
その他の悪性腫瘍
(2)高リスク神経芽腫に対する化学療法の追加及び予後不良群に対する. KIR リガンド不一致同種臍帯血移植による層別化治療の多施設共同前向き臨床試験: JN-H-20 高リスク神経芽腫
(3)低・中間リスク群神経芽腫の残存腫瘍に対する観察研究:JN-LI-21 低・中間リスク神経芽腫
(4)初診時血清診断による神経芽腫の無治療経過観察研究
JN-H-16
低リスク神経芽腫
(5)小児肝癌に対する国際共同臨床試験 (JPLT4: PHITT) 肝芽腫
(6)難治性血管・リンパ管疾患に対するシロリムスの安全性及び有効性を検討する多施設共同非盲検非対照試験 血管・リンパ管奇形
(7)低リスクおよび標準リスク胚細胞腫瘍に対する国際共同臨床試験;AGCT1531 胚細胞腫瘍
基礎研究

上記で述べた臨床研究とは別に、小児悪性固形腫瘍の新規治療開発を目的に下記基礎研究を行なっております。

現在進行中の基礎研究
1. 小児悪性固形腫瘍に対する新規免疫治療の開発

九州大学薬学研究院革新的バイオ医薬創生学講座と共同研究で小児悪性腫瘍に対する新規免疫治療の開発を行なっております。

2. 肝芽腫におけるFOXM1の発現と化学療法抵抗性の関連に関する研究
(肝芽腫は組織型でEmbryonaltypeとFetal typeに大別される)

FOXM1 (Forkhead box protein M1)は発生, 組織分化, 代謝調節に関わる転写因子であるフォークヘッド遺伝子のサブファミリーの一つであり、DNA損傷修復、細胞増殖、細胞周期の進行、細胞分化、血管新生などで癌の進行および癌の薬剤耐性に関係していると言われています。
我々は、肝芽腫の組織像別にFOXM1の発現解析を行い、FOXM1が新たな治療ターゲットになりうるかの検討を行なっております。

これまでの研究成果

1. 神経芽腫に対する放射線併用樹状細胞療法の有効性のメカニズムに関する基礎的研究

Sequential actions of immune effector cells induced by viral activation of dendritic cells to eliminate murine neuroblastoma.
Kawakubo N, Tanaka S, Kinoshita Y, Tajiri T, Yonemitsu Y, Taguchi T.
J Pediatr Surg. 2017 Aug 26. pii: S0022-3468(17)30515-8

2. 横紋筋肉腫における病理学的および分子生物学的研究

FOXM1 expression in rhabdomyosarcoma: a novel prognostic factor and therapeutic target.
Kuda M, Kohashi K, Yamada Y, Maekawa A, Kinoshita Y, Nakatsura T, Iwamoto Y, Taguchi T, Oda Y.
Tumour Biol. 2016 Apr;37(4):5213-23

3. 小児固形悪性腫瘍におけるGlypican3の発現と新規腫瘍マーカーとしての有用性

Glypican 3 expression in pediatric malignant solid tumors.
Kinoshita Y, Tanaka S, Souzaki R, Miyoshi K, Kohashi K, Oda Y, Nakatsura T, Taguchi T.
Eur J Pediatr Surg. 2015 Feb;25(1):138-44.

Immunohistochemical findings: (a) hepatoblastoma, 2-year old; (b) yolk sac tumor, 12-year old; (c) Wilms tumor, 3-year old.
4. 3Dプリンターを用いた手術シミュレーション

Three-dimensional liver model based on preoperative CT images as a tool to assist in surgical planning for hepatoblastoma in a child.
Souzaki R, Kinoshita Y, Ieiri S, Hayashida M, Koga Y, Shirabe K, Hara T, Maehara Y, Hashizume M, Taguchi T.
Pediatr Surg Int. 2015 Jun;31(6):593-6.

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