臨床研究

腸管不全患者における治療介入の臨床的特徴に関する観察研究

1.観察研究について
九州大学病院では, 最適な治療を患者さんに提供するために, 病気の特性を研究し, 診断法, 治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果, 疾病への治療の効果等の情報を集め, これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして, 九州大学病院小児外科では, 現在腸管の疾患, 大量切除や機能障害によって起こる, 水分補給, 栄養状態, 成長を維持するのに不十分な状態である, 腸管不全の患者さんを対象として, 症状, 発症年齢, 性別, 診断名と術式, 術後合併症, 身長・体重の推移, 生命予後, 術前術後の血液検査や画像検査の結果等の臨床的特徴に関する「観察研究」を行っています。
 今回の研究の実施にあたっては, 九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て, 研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は, 2031年8月31日までです。
2.研究の目的や意義について
 腸管不全は腸管の疾患, 大量切除や機能障害によって起こる, 水分補給, 栄養状態, 成長を維持するのに不十分な状態で, 長期の静脈栄養を要します。腸管大量切除の原因疾患として,壊死性腸炎,中腸軸捻転,多発小腸閉鎖,Hirschsprung病などがあり,機能障害を起こす疾患には, 腸管内神経細胞の先天的欠如に起因する正常な蠕動運動を欠くHirschsprung病や, 腸壁内神経細胞が認められるにも関わらず, Hirschsprung病と類似した先天的な消化管の運動機能障害を示すHirschsprung病類縁疾患(壁内神経細胞減少症(Hypoganglionosis), 慢性特発性仮性腸閉塞症(CIIPS), 巨大膀胱・狭小大腸・腸蠕動不全症候群(MMIHS)など) があります。いずれの原疾患も新生児期に発症しうるため, 出生早期から始まる長期の静脈栄養(以下PN)が必要です。長期のPN管理が続く場合,カテーテル関連血流感染症, カテーテルの血栓閉塞・損傷, 腸管不全関連肝障害等をきたし,その予後は不良です。腸管不全における治療プログラムとして「残存する腸管機能を回復させ,PNから離脱できるよう段階的・集学的に行う」ことを目標とする腸管リハビリテーションと呼ばれる治療が提唱され,これらの合併症を避ける試みがなされていますが, その効果に関しての臨床試験や長期的な予後, 身長・体重などの成長面での評価に関しての報告は十分とは言えません。特にhypoをはじめとするHirschsprung病類縁疾患は希少疾患であり,長期予後やQOLの向上を含めた包括的治療戦略は確立されていません。
 そこで, 今回, 九州大学小児外科での腸管不全の加療歴のある患者さんを対象に疾患名, 性別, 年齢, 術式, 術後早期合併症と晩期合併症, 血液検査結果, 病理学的結果, 自己腸管生存の有無, 脳死小腸移植の有無と手術時期, 予後, 身長・体重の推移について診療情報を収集し, 小児腸管不全の術前術後の臨床的特徴を明らかにすることを目的として, 本研究を計画しました。
 
3.研究の対象者について
 九州大学病院小児外科において1979年1月1日~2026年8月31日に加療を行った腸管不全の患者さん, 約100名を対象にします。研究の対象者となることを希望されない方やその保護者の方は, 下記連絡先までご連絡ください。
4.研究の方法について
 この研究を行う際は, カルテより下記の情報を取得します。疾患別の性別, 年齢, 術式, 手術時期, 予後や, 術前術後の血液検査の結果をもとに, 小児腸管不全を臨床的に評価します。

〔取得する情報〕
 疾患名, 性別, 年齢, 臨床所見(症状,身長・体重の推移), 病型, 術式, 術中所見(残存腸管長, 切除腸管長を含む),術後早期合併症
 と晩期合併症, 静脈栄養に関する情報(投与カロリー, 使用薬剤および薬剤から計算される各成分(糖, アミノ酸, 脂肪, 電解質,
 微量元素)内容, 投与経路, 中心静脈カテーテルの挿入部位・使用期間,感染回数),血液生化学検査所見(WBC, RBC, Hb, PLT,
 Che, AST, ALT, ALP, T-Bil, D-Bil,γ-GTP, BUN, Cre,CRP,コレステロール,中性脂肪,LDL,HDL),内分泌ホルモン(副腎皮質ホル
 モン,性ホルモン), 微量元素(Cu, Zn,Mn, Cr, Se),
栄養学的検査結果(各種RTP,アミノ酸分析, 脂肪酸分画, M2BPGi, シスタチ
 ンC),画像検査結果(骨密度, CT, MRI, 消化管造影検査,内視鏡検査),
病理学的所見, 脳死小腸移植の有無と手術時期, 移植待機
 時間,薬物治療(GLP-2アナログ製剤),成長発達, 予後


 
5.個人情報の取扱いについて
 研究対象者のカルテの情報をこの研究に使用する際には, 研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し, 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は, 同分野の職員によって入室が管理されており, 第三者が立ち入ることはできません。
 また, この研究の成果を発表したり, それを元に特許等の申請をしたりする場合にも, 研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
 この研究によって取得した情報は, 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野・教授・田尻 達郎の責任の下, 厳重な管理を行います。
 ご本人等からの求めに応じて, 保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は, ご連絡ください。
 
6.試料や情報の保管等について
この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し, 研究終了後は, 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野において同分野教授・田尻 達郎の責任の下, 10年間保存した後, 研究用の番号等を消去し, 廃棄します。
 
 また, この研究で得られた研究対象者の情報は, 将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで, 前述の期間を超えて保管し, 将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には, 改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し, 承認された後に行います。
 
7.利益相反について
九州大学では, よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に, 企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており, 国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で, 産学連携を進めた場合, 患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
 本研究に関する必要な経費は部局等運営費であり、 研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
 利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は, 下記の窓口へお問い合わせください。
 利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)
8.研究に関する情報の開示について
 この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や, この研究の独創性の確保に支障がない範囲で, この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は, ご連絡ください。
 また,この研究では,学会等への発表や論文の投稿により,研究成果の公表を行う予定です。

 
9.研究の実施体制について
  この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所 九州大学病院小児外科
九州大学病院総合周産期母子医療センター
九州大学大学院医学研究院小児外科学分野
研究責任者 九州大学病院総合周産期母子医療センター 講師 永田公二
研究分担者 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 教授 田尻達郎
九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 准教授 松浦俊治
九州大学病院小児外科 講師 吉丸耕一朗
九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 助教 川久保尚徳
九州大学病院総合周産期母子医療センター 助教 福田篤久
九州大学病院小児外科 助教 近藤琢也
九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 学術研究員 鳥井ヶ原幸博
10.相談窓口について
この研究に関してご質問や相談等ある場合は, 下記担当者までご連絡ください。
 
事務局
(相談窓口)
担当者:九州大学病院小児外科 助教 近藤琢也
連絡先:〔TEL〕092-642-5573(内線5573)
    〔FAX〕092-642-5580
メールアドレス:ped-surg@ped.med.kyushu-u.ac.jp
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