臨床研究

生体肝移植周術期における門脈血流量と血中乳酸値変動の検討

1.観察研究について
 九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院小児外科では、現在生体肝移植を受けた患者さんを対象として、生体肝移植周術期における門脈血流量と血中乳酸値変動に関する「観察研究」を行っています。
 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2023年12月31日までです。
2.研究の目的や意義について 
 生体肝移植ではドナー残肝容積の確保が重要であり、レシピエントの体格に対して比較的小さな移植肝(グラフト)しか選択できない場合があります。肝移植術後における過小グラフト症候群(small for size syndrome, SFSS)は過小グラフト移植後に難治性腹水や遷延性黄疸、凝固能異常、肝性脳症を来す症候群であり、その原因として相対的に過剰な門脈血流による類洞内皮障害や肝動脈血流の低下が言われています。SFSSは移植肝グラフトの予後不良因子の一つであり、早期診断と治療介入が必要です。
 近年、乳酸の大半が肝臓で代謝されることから、肝移植周術期の乳酸値が早期グラフト機能不全のバイオマーカーとして注目されています。肝移植周術期の乳酸値やその変動と、他の検査結果を組み合わせることで、グラフト機能不全の移植後早期の診断ツールとなりうる可能性が報告されています。
 今回、生体肝移植周術期における動脈血中乳酸値と移植後グラフト門脈血流量の関連について検討し、乳酸値変動が生体肝移植における早期の予後予測因子となりうるか検証することを目的に、本研究を計画した。
3.研究の対象者について
 九州大学病院小児外科において1996年10月1日から2022年9月30日までに生体肝移植を受けられた方のうち、98例を対象にします。原因となった疾患が劇症肝炎、先天性代謝性疾患、ミトコンドリア病である方や、術前に肺高血圧、代謝性アシドーシスがあった方、自己肝温存同所性部分肝移植を受けられた方は対象ではありません。
 研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。
4.研究の方法について
 この研究を行う際は、カルテより以下の情報を取得します。取得した情報を用い、生体肝移植周術期における門脈血流量と血中乳酸値変動の関連について検討します。
〔取得する情報〕
年齢、性別、手術時年齢、ドナー年齢、手術記録、術後経過、合併症の有無
血液検査結果、画像検査結果、病理組織診結果
5.個人情報の取扱いについて
 研究対象者のカルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
 また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
 この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野・教授・田尻 達郎の責任の下、厳重な管理を行います。
 ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。
6.試料や情報の保管等について
〔情報について〕
 この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野において同分野教授・田尻 達郎の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
 
 また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。
 
7.利益相反について 
 九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
 本研究に関する必要な経費は部局等運営経費であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
 利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
 利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)
 
8.研究に関する情報の開示について
 この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
9.研究の実施体制について
この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所 九州大学病院小児外科、成育外科、小腸移植外科
九州大学大学院医学研究院小児外科学分野
研究責任者 九州大学大学院医学研究院小児外科分野 教授 田尻 達郎
研究分担者 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 准教授 松浦 俊治
九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 助教 栁 祐典
九州大学大学院医学系学府小児外科学分野 大学院生 白井 剛
九州大学大学院医学系学府小児外科学分野 大学院生 鳥井ヶ原 幸博
九州大学大学院医学系学府小児外科学分野 大学院生 河野 雄紀
九州大学大学院医学系学府小児外科学分野 大学院生 内田 康幸
九州大学大学院医学系学府小児外科学分野 大学院生 梶原 啓資
10.相談窓口について
この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。
事務局
(相談窓口)
担当者:九州大学大学院医学系学府小児外科学分野 大学院生 梶原 啓資
連絡先:〔TEL〕092-642-5573
      〔FAX〕092-642-5580
メールアドレス:ped-surg@med.kyushu-u.ac.jp
 
 
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