臨床研究

マイクロ波メスの有用性に関する後方視的観察研究

1.観察研究について
 九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院小児外科では、現在小児内視鏡手術を施行した患者さんを対象として、マイクロ波メスの有用性に関する「観察研究」を行っています。
 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2026年3月31日までです。
2.研究の目的や意義について 
 近年の科学技術の進歩により様々な手術用デバイスが開発され、内視鏡手術で使用されています。現在は高周波電流や超音波振動をエネルギーソースとする電気メス・ベッセルシーリングデバイス、超音波凝固切開装置が主に使用されていますが、これらエネルギーソースは組織の蛋白質に直接作用することで組織変性を起こします。一方デバイス先端が高熱になる(100℃以上)ことで目的組織周辺へ熱が拡散し周囲の血管壁の変性や神経の変性が起こったり、高周波電流では放電現象が起こったりするなどで術中術後の合併症が起こる可能性があります。
 近年新たなエネルギーソースとしてマイクロ波を用いたデバイス(マイクロ波メス)が内視鏡手術分野に加わりました。マイクロ波照射により組織内の水分子が振動し水分子が発熱することで組織変性が惹起されるため、これまでは肝腫瘍に対する経皮的焼灼術のエネルギーソースとして使用されてきました。このマイクロ波メスは従来のエネルギーデバイスと比較してデバイス周辺が高熱になりにくく(100℃以下)、高周波電流のように放電現象を起こすことがなくサージカルスモークの発生が少ないとされています。
 小児領域における内視鏡手術は1990年代より徐々に導入、浸透していくにつれ、このようなエネルギーデバイスを用いることが多くなってきましたが、小児では成人と比較して体格が小さいため周囲臓器が近接しやすいため術野が狭く周辺臓器が近接しやすくなります。そのため、使用するエネルギーデバイスによっては思わぬ合併症をきたす危険性が考えられ、マイクロ波メスは前述の特徴があることから小児領域における内視鏡手術で用いるのに有効ではないかと考えられます。
 本研究では、当科でエネルギーデバイスを使用して手術を施行した患者を対象に、マイクロ波メスを用いた手術症例とそれ以外のエネルギーデバイスを用いた手術症例について、各術式において比較検討を行いマイクロ波メスの有用性について検証を行うこととしました。
小児外科領域において内視鏡手術が導入されて30年以上が経過しており、さまざまな術式に対してエネルギーデバイスが導入されてきていますが、新たなデバイスとしてのマイクロ波メスの小児領域における有用性を検証することは、他のエネルギーデバイスの特性などを再検討することにもつながると考えられ、今後の小児領域における内視鏡手術の発展や医療安全に対する認識の向上につながることが期待されます。
3.研究の対象者について
 九州大学病院小児外科において2016年1月1日から2022年12月31日までにマイクロ波メスおよびその他エネルギーデバイスを用いた内視鏡手術を施行した16歳未満の患者さんおよび16歳以上の未成年の患者さん、120名を対象にします。
 研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。
4.研究の方法について
 この研究を行う際は、カルテより以下の情報を取得します。得られたデータを用い、術式別にエネルギーデバイスの使用状況と術中術後経過をまとめ、マイクロ波メスを用いた症例とその他エネルギーデバイスを用いた症例とで比較検討を行います。
〔取得する情報〕
原疾患、併存疾患、外科治療施行時の年齢・身長・体重、外科治療に至る理由、外科治療の内容(術式、手術内容、選択したエネルギーデバイス、手術時間、術中所見)、手術時合併症、手術後合併症、術後経過、血液検査結果(WBC, RBC, PLT, Hb, Ht, ALB, TP, BUN, CRE, AST, ALT, ALP, GGTP, CHE, CRP, Na, K, Cl, Mg, Ca, P, PCT, PT, PTINR, APTT)、画像検査結果(CT、MRI、造影検査、核医学検査)
 
5.個人情報の取扱いについて
 研究対象者のカルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
 また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
 この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野・教授・田尻 達郎の責任の下、厳重な管理を行います。
 ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。
 
6.試料や情報の保管等について
〔情報について〕
この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野において同分野教授・田尻 達郎の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
 また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。
7.利益相反について 
 九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
 本研究に関する必要な経費は部局等運営費であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
 利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
 利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)
 
8.研究に関する情報の開示について
 この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
 
9.研究の実施体制について
この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所 九州大学病院小児外科
九州大学大学院医学研究院小児外科学分野
研究責任者 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 教授 田尻 達郎
研究分担者 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 准教授 松浦俊治
九州大学病院総合周産期母子医療センター 講師   永田公二
九州大学病院小児外科 助教            小幡 聡
九州大学病院総合周産期母子医療センター 助教   川久保尚徳
九州大学病院小児外科 助教            福田篤久
 
10.相談窓口について
この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。
事務局
(相談窓口)
担当者:九州大学病院小児外科 助教 小幡 聡
連絡先:〔TEL〕092-642-5573
      〔FAX〕092-642-5580
メールアドレス:ped-surg@med.kyushu-u.ac.jp
 
 
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