臨床研究

小児卵巣腫瘍茎捻転における造影CT所見に関する後方視的検討

1.観察研究について
 九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院小児外科では、現在小児卵巣腫瘍の患者さんを対象として、造影CT所見に関する「観察研究」を行っています。
 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2025年3月31日までです。
2.研究の目的や意義について 
 小児卵巣腫瘍茎捻転(以下、本症)は、腹痛や嘔吐など臨床症状が非特異的であることと、各種検査から捻転を診断することは困難であることから、治療介入の適切な時期を逃してしまうことがあります。病歴と臨床症状から本症を疑い、画像検査の第一選択として腹部超音波検査を行いますが、より多くの情報を得るために、造影CT検査やMRI検査が追加されることもあります。造影CT検査においては、成人領域では捻転を示唆する所見として卵管および腫瘤壁の肥厚、腹水貯留、子宮の捻転側への偏位などが知られていますが、小児領域ではCT検査によって本症を診断したとする報告は少なく、その有用性は明らかではありません。血液検査では白血球上昇が診断に有用であるとする報告もありますが、特異的ではないため、臨床への応用は限定的とされています。成熟奇形腫などの良性腫瘍や機能性卵胞が原因であることが多い本症においては、治療後の卵巣機能温存が重要視されおり、捻転解除が早ければ早いほど機能温存の可能性が高く、早期の診断、捻転解除が重要となります。
 造影CTは検査時間が短く、超音波検査等の他の検査と比較して多くの情報を得ることができるため、救急疾患である本症においては重要な検査項目と考えられます。また、超音波検査と比較して、検者の技術に依存せず、他の多くの病因の可能性を排除することも可能です。卵巣腫瘍捻転による卵巣虚血は、しばしば造影CTにおける卵巣壁の造影欠損として認識される場合もありますが、客観的な指標が存在していないため、その判断は読影医師によってばらつきがあります。
 本研究の目的は小児卵巣腫瘍における造影CTの卵巣壁CT値を客観的に評価することで、捻転による軽度造影不良所見を早期に発見しうる可能性がある方法を考案し、当科で治療を行った症例を用いてその有用性を検討することです。それにより、正確な診断、早期治療介入を促すことが期待されます。
3.研究の対象者について
 九州大学病院小児外科において、2008年1月1日から2022年2月28日までの間に卵巣腫瘍または卵巣(腫瘍)茎捻転と診断され、手術を行った62名を対象とします。
 研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。
4.研究の方法について
 この研究を行う際は、カルテより以下の情報を取得します。得られたデータを用い、卵巣腫瘍茎捻転症例と卵巣腫瘍非捻転症例の卵巣壁CT値を比較、治療方針を決める際の有用性について検討します。
〔取得する情報〕
臨床所見(年齢、主訴、初診時体温、身体所見)、血液生化学検査所見(WBC,CRP)、手術時間、術中所見、病理検査結果、CT所見(卵巣壁CT値)、術後の再発の有無
5.個人情報の取扱いについて
 研究対象者のカルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
 また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
 この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野・教授・田尻 達郎の責任の下、厳重な管理を行います。
 ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。
6.試料や情報の保管等について
〔情報について〕
 この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野において同分野教授・田尻 達郎の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
 また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。
7.利益相反について 
 九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
 本研究に関する必要な経費は部局等運営費であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
 利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
 利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)
8.研究に関する情報の開示について
 この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
 
9.研究の実施体制について
この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所 九州大学病院小児外科・成育外科・小腸移植外科
九州大学大学院医学研究院小児外科分野
研究責任者 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 教授 田尻 達郎
研究分担者 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 准教授 松浦俊治
九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 助教 川久保尚徳
10.相談窓口について
この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。
事務局
(相談窓口)
担当者:九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 助教 川久保尚徳
連絡先:〔TEL〕092-642-5573
      〔FAX〕092-642-5580
メールアドレス:ped-surg@med.kyushu-u.ac.jp
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