臨床研究

腸管不全の患者登録と予後因子に関する研究

1.観察研究について
 九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院小児外科では、現在腸管不全の患者さんを対象として、腸管不全の患者登録と予後因子に関する「観察研究」を行っています。
 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2025年3月31日までです。
2.研究の目的や意義について 
 わが国の腸管不全の重症な患者さんは、約300人と言われていて、とても稀な疾患のため、まだ適切な治療が確立されていません。
 重症な患者さんに対する治療として小腸移植がありますが、国内の小腸移植は、保険適用となったものの、その実施数は40人弱程度に留まっています。一方で、海外での小腸移植は、2019年の国際登録によると4000人以上に実施されております。
 短腸症やヒルシュスプルング病類縁疾患 などの腸管不全は、小腸移植によって救命することが可能ですが、疾患の稀少性のためその分類や治療方針に関するコンセンサスが得られておらず、未だ多くの患者さんは適切な時期に小腸移植が受けられずにいます。
 本研究の目的は、全国の腸管不全と診断された重症な患者さんにご協力いただき、腸管不全の原因や小腸移植の実施状況を調査することで、小腸移植の適応判断と不可逆的な腸管不全患者さんの治療技術の詳細を把握することです。さらには、腸管不全の予後因子 を明らかにし、腸管不全の適切な治療法を特定し、小腸移植の技術の向上につなげることを目的としています。
 本研究の結果から腸管不全の原因の把握をするのみならず、腸管不全患者の内科的、外科的治療技術の詳細を把握することである。更に小腸移植の技術の向上を図ること目指しています。この研究は、登録から2年間一斉調査(1年後)時に、全国の病院から約100人の方にご参加いただく予定です。この研究は、2025年3月末までを予定しております。
3.研究の対象者について
 2010年1月1日~承認日までに九州大学病院にて、静脈栄養を6ヵ月以上継続して実施している腸管不全の患者さん、5名を対象とさせていただく予定です。
 研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。
4.研究の方法について
 この研究を行う際は、カルテより以下の情報を取得します。Web上のRedCap(データ集積管理システム)に入力し、大阪大学に送ります。
 大阪大学が全ての情報を収集し、腸管不全の原因の把握、腸管不全患者の内科的、外科的治療技術の詳細の把握、解析を行います。
〔取得する情報〕
1) 被験者背景
初診日、発症日、生年月日、性別、出生時身長( 18 歳まで) ・ 出生時体重( 18 歳まで)(乳児は 1 歳未満とする。)
原疾患(腸管不全:短腸症候群 の有無 、 腸管 運動障害 の有無 、その他 の腸管不全の有無)

2) 身体所見
身長・ 体重 小腸切除の有無(有りの場合は 残存小腸の長さ、回盲弁の有無) 、
カテーテル閉塞の有無(有の場合は閉塞ルート、閉塞日)、過去1年間のカテーテル感染の有無(有の場合は回数)
BMI、頭囲(6歳まで)、小腸切除の有無(有の場合は残存小腸の長さ、回盲弁の有無)
Performance status・検査日

3) 臨床検査
血液検査(血小板)
生化学検査(AST、ALT、γGTP、T-Bil、D-Bil、TP、ALB、BUN、Cr、PT-INR)
尿検査

4) 治療
栄養法
経口・経管栄養摂取の有無(有の場合は開始日・終了日、内容(一日平均投与熱量、一日平均アミノ酸量、一日平均水分量、一日平均摂取回数一週間当たりのおよその平均投与日数)、
絶食の有無、医学的な経口摂取の可/不可
静脈栄養の有無(有の場合は開始日、内容(一日平均投与熱量、一日平均アミノ酸量、一日平均水分量、静脈注射用脂肪製剤の有無(脂肪乳剤、Omegaven®、その他の脂肪酸高含有製剤の名称)、一日平均投与時間、一週間当たりのおよその平均投与日数)、
人工肛門の肛門側からの再注入施行の有無
薬剤(probioticsの有無、腸管運動改善薬の有無、H2blockerの有無、PPIの有無)
外科的治療の有無(有の場合人工肛門造設の有無(さらに有の場合は実施時期)、胃瘻造設の有無(さらに有の場合は実施時期)、胃瘻閉鎖の有無(さらに有の場合は実施時期)、腸瘻の造設の有無(さらに有の場合は実施時期)腸瘻閉鎖の有無(さらに有の場合は実施時期)、腸管延長の有無(さらに有の場合は実施時期)、腸管切除の有無(さらに有の場合は実施時期)
静脈栄養投与時の処置手技(静脈栄養投与時のTauroLockTMの使用の有無、エタノールロックの使用の有無)
 
5) 合併症
① 肝障害関連情報
・ 胆汁うっ滞の症状があり一定期間(1週間)以上を開けた2回以上の採血直接ビリルビン2.0 mg/dl以上の検査結果の有無・有の場合は検査2回の日付、ビリルビン値(発症時及び登録時)
・ 血小板の数値(登録時)
・ 脾腫の有無(発症時及び登録時)
・ 消化管静脈瘤の有無(発症時及び登録時)
・ 腹水の有無(発症時及び登録時)
・ 肝性脳症の有無(発症時及び登録時)
・ その他の顕性の門脈圧亢進症状の有無、有の場合は名称(発症時及び登録時)
② 腎障害関連情報
腎障害の有無、有の場合は以下の項目について情報を収集する。
・ 腎不全の有無
・ 尿路結石の有無
・ 腎石灰化の有無
・ 腎炎の有無
・ 透析中の有無
・ その他の場合は名称
③ 過去1年間の敗血症の有無

6)転帰調査
 ・転帰
 ・最終転帰
 ・小腸移植の有無(有の場合移植日)
他機関への試料・情報の送付を希望されない場合は、送付を停止いたしますので、ご連絡ください。
5.個人情報の取扱いについて
 研究対象者のカルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
 また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
 この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野・教授・田尻達郎の責任の下、厳重な管理を行います。
ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。
 研究対象者のカルテの情報を大阪大学へ送付する際には、九州大学にて上記の処理をした後に行いますので、研究対象者を特定できる情報が外部に送られることはありません。
6.試料や情報の保管等について
〔情報について〕
 この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野において同分野教授・田尻達郎の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
 また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。
7.利益相反について 
 九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
 本研究では利益相反状態が存在しますが、観察研究実施計画は上記要項に基づき調査され、利益相反状態が存在することによって研究対象者に不利益が及ぶおそれはないと判断されました。
 利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
 利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)
8.研究に関する情報の開示について
 この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
9.研究の実施体制について
この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所 九州大学病院小児外科
九州大学大学院医学研究院 小児外科学分野
研究責任者 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野・准教授・松浦俊治
研究分担者 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 教授 田尻達郎
九州大学病院小児外科・助教・河野雄紀
九州大学病院小児外科・学術研究員・梶原啓資
九州大学大学院医学系学府小児外科学分野 大学院生 内田康幸
九州大学病院救命救急センター・助教 鳥井ケ原幸博
共同研究機関等 機関名 / 研究責任者の職・氏名 役割
①大阪大学大学院医学系研究科小児外科/上野豪久 
②京都大学医学部肝胆膵・移植外科小児外科/小川絵里
③東北大学大学院医学系研究科小児外科学分野/工藤博典
④慶應義塾大学病院小児外科/山田洋平
⑤国立成育医療センター移植センター/阪本靖介
①研究統括
情報の収集・解析
②~⑤情報の提供
 
 
10.相談窓口について
この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。
事務局
(相談窓口)
担当者:九州大学大学院医学研究院小児外科学分野・准教授・松浦俊治
連絡先:〔TEL〕092-642-5573
      〔FAX〕092-642-5580
メールアドレス:ped-surg@med.kyushu-u.ac.jp
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