臨床研究

重症染色体異常を伴う患児の外科治療に関する現状と課題

1.観察研究について
 九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院小児外科では、現在重症染色体異常を伴う患者さんを対象として、重症染色体異常を伴う患児の外科治療に関する現状と課題に関する「観察研究」を行っています。
 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2025年3月31日までです。
2.研究の目的や意義について 
 13trisomy(T13)、18trisomy(T18)の患者さんの治療については、従来は、「現在行っている以上の治療は行わず一般的養護(保温、栄養、清拭、愛情)に徹する」という暗黙の了解の下、外科治療を差し控える事が多く行われていました。しかしながら、2000年以降はそれまでのパターナリスティックな対応から、患者・家族・社会に応じた対応が望ましいという風潮に変化し、個々の患者によりそった対応が求められるようになりました。そして、本邦でも2004年に「重篤な疾患を持つ子どもの医療をめぐる話し合いのガイドライン」が発表され、T13、T18に対しても積極的な治療介入をおこなう施設も散見されるようになっています。
 T13、T18の患児は様々な併存疾患を持つため、小児外科が対象となる内臓のみではなく、心疾患や気道疾患などの多診療科における治療方針も考慮して対応しなければ、患者家族へのより良い情報提供は困難です。近年、小児外科疾患や心臓血管外科疾患の外科的治療介入をおこなう事で、T13、T18患児の予後が改善するとの報告もありますが、施設間格差があり一律に治療を推奨するものではありません。そこには、患者・家族の希望や精神発達遅滞を伴う事が多い本症に対する治療の是非を問う倫理的問題のみならず、地域限られた医療資源や高騰する一方の医療費をどのように分配していくべきかといった政策医療にかかわる問題も存在します。
 このような背景から、本研究は、当院におけるT13、T18患者の外科的治療の現状と予後を検証し、今後の治療方針について検討を行うことにいたしました。
【本研究の目的】
・当院で治療を受けたT13、T18患者に対する外科治療の現状の把握と今後の治療方針を検討する。
【検証すべき具体的課題】
・対象疾患患者の本学における症例数の把握、治療の現状と予後
・対象疾患患者の本学における入院期間、人工呼吸期間、静脈栄養期間、在宅医療移行状況
などの副次評価項目の収集
・主要アウトカム、副次的アウトカムの妥当性についての検証と統計学的解析手法の検討
・転院などによる症例数の減少を防ぐための情報の追跡
3.研究の対象者について  
 九州大学病院において2007年1月1日から2023年8月31日までに13trisomy(T13)、または18trisomy(T18)と診断された30名を対象にします。
4.研究の方法について
 この研究を行う際は、カルテより以下の情報を取得します。取得した情報の関係性を分析し、当院で治療を受けたT13、T18患者に対する外科治療の現状の把握と今後の課題抽出をおこないます。
 
 〔取得する情報〕
胎児診断情報、出生年月、在胎週数、出生体重、Apgar score 1分値・5分値(点)、性別、身長、体重、合併形態異常(染色体異常、中枢神経異常、動脈管開存以外の心奇形、その他)、手術情報(気管切開、小児外科手術、心臓血管外科手術など)、人工呼吸開始日、人工呼吸終了日、人工呼吸期間、酸素酸素投与日、酸素投与終了日、酸素投与期間、入院時日齢、退院時日齢、退院理由、経管栄養の有無、経口摂取の有無、退院時合併症の有無、成長発達、退院後の合併症、転帰情報
5.個人情報の取扱いについて
 研究対象者の測定結果、カルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
 また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
 この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野・教授・田尻達郎の責任の下、厳重な管理を行います。
ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。
6.試料や情報の保管等について
〔情報について〕
 この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野において同分野教授・田尻達郎の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
 
 また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。
7.利益相反について 
 九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
 本研究に関する必要な経費は部局等運営費であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
 利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
 利益相反マネジメント委員会
 (窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)
8.研究に関する情報の開示について
この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
9.研究の実施体制について
この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所 九州大学病院小児外科
九州大学大学院医学研究院小児外科学分野
研究責任者 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 教授 田尻達郎
研究分担者 九州大学病院総合周産期母子医療センター 講師 永田公二
九州大学病院小児外科 助教 福田篤久
九州大学大学院医学研究院共同研究部門 助教 近藤琢也
 
 
10.相談窓口について 
 この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。
 
事務局
(相談窓口)
担当者:九州大学病院総合周産期母子医療センター 講師 永田公二
連絡先:〔TEL〕092-642-5573
      〔FAX〕092-642-5580
メールアドレス:ped-surg@med.kyushu-u.ac.jp
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