臨床研究

GRWR基準値外の生体肝移植症例のリスクの検討

1.臨床研究について
 九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「臨床研究」といいます。その一つとして、九州大学病院小児外科では、現在、生体肝移植を受けられた患者さんを対象として、性別、診断名と術式、術後合併症、ドナーの特徴との関連性、生命予後、術前術後の血液検査や画像検査の結果などの臨床的特徴に関する「臨床研究」を行っています。
 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2028年12月31日までです。
 
2.研究の目的や意義について 
 小児生体肝移植は、末期肝疾患、代謝性疾患、肝芽腫の小児患者にとって救命治療の選択肢として確立されてきました。移植に際してはドナー、レシピエント双方の造影CTを撮影し、肝臓のサイズを画像上で測定して、レシピエントに適切なサイズの肝臓がドナーの健康を大きく損なうことなく採取可能であるかの検討を行った上で移植を行います。適切な摘出肝臓のサイズはレシピエントの体格に基づいた基準を設定されますが、そのうちの一つにGRWR(グラフト対体重比)があります。これまでの報告からGRWRは0.8以上3.0-4.0未満が適正範囲であるとされていますが、昨今、この基準値外でも移植後の経過に問題なかったとする報告が散見され、一定の見解が得られていないのが現状です。加えて、安全性を担保した上でのこうした基準を拡大することができればドナー不足に対する解決策ともなりえ、より多くのレシピエントが早期に移植医療を受けられる可能性に繋がります。
 そこで、今回、九州大学小児外科で生体肝移植での加療歴のある患者さんを対象に疾患名、性別、年齢、身長、体重、手術中の所見、術後早期合併症と晩期合併症、手術前後の血液検査結果、生存・グラフト定着の有無について診療情報を収集し、GRWRの基準値外となってしまった患者さんと、基準値内の患者さんとの移植後の経過を比較し、その安全性を検討することを目的として、本研究を計画しました。

 
3.研究の対象者について   -4.研究の方法について
3.研究の対象者について 
 九州大学病院小児外科において1996年1月1日~2023年12月31日に初回生体肝移植を行った患者さん、99名を対象にします。研究の対象者となることを希望されない方やその保護者の方は、下記連絡先までご連絡ください。
 
4.研究の方法について 
 この研究を行う際は、カルテより下記の情報を取得します。GRWRごとに各項目を評価し、合併症の発生率や生存率に差が生じるかどうかの評価をします。
〔取得する情報〕
  疾患名、性別、 年齢、 臨床所見(身長・体重)、 ドナー年齢、血液型、ドナー血液型、 術式、術中所見(グラフト重量および
  これから算出される各種データ、 手術時間、吻合後血流速度を含む)、術後早期合併症と晩期合併症、 血液生化学検査
  所見(AST、 ALT、 T-Bil、γ-GTP、PT、PT-INR)、 画像検査結果(CT)、 再移植の有無と再移植時期、 予後

 
5.研究への参加を希望されない場合(事前に同意を得ていない資料を用いる研究の場合)
 この研究への参加を希望されない方は、下記の相談窓口にご連絡ください。
 なお、研究への参加を撤回されても、あなたの診断や治療に不利益になることは全くありません。
 その場合は、収集された情報などは廃棄され、取得した情報もそれ以降はこの研究目的で用いられることはありません。ただし、参加を時にすでに研究結果が論文などで公表されていた場合には、完全に廃棄できないことがあります。
 
 
6.個人情報の取扱いについて
 研究対象者のカルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
 また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
 この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野・教授・田尻 達郎の責任の下、厳重な管理を行います。
 ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。
 
7.試料や情報の保管等について
 この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院小児外科学分野において同分野教授・田尻 達郎の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
 
 また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。
 
8.この研究の費用について   -9.利益相反について 
8.この研究の費用について 
 この研究に関する必要な費用は、部局等運営費でまかなわれます。
 
9.利益相反について 
 九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
 本研究に関する必要な経費は部局等運営費であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
 利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
 利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)

 
10.研究に関する情報の開示について   -11.特許権等について
10.研究に関する情報の公開について
 この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
また、この研究では、学会等への発表や論文の投稿により、研究成果の公表を行う予定です。
 
11.特許権等について
 この研究の結果として、特許権等が生じる可能性がありますが、その権利は九州大学及び共同研究機関等に属し、あなたには属しません。また、その特許権等を元にして経済的利益が生じる可能性がありますが、これについてもあなたに権利はありません。
 
 
12.研究を中止する場合について
 研究責任者の判断により、研究を中止しなければならない何らかの事情が発生した場合には、この研究を中止する場合があります。なお、研究中止後もこの研究に関するお問い合わせ等には誠意をもって対応します。
 
13.研究の実施体制について   -14.相談窓口について 
13.研究の実施体制について
この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所 州大学病院小児外科
九州大学大学院医学研究院 小児外科学分野
研究責任者 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 教授 田尻達郎
研究分担者 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 准教授 松浦俊治
九州大学大学院医学研究院 小児外科学分野 助教 川久保尚徳
九州大学病院救命救急センター・助教 鳥井ヶ原幸博
 
 
14.相談窓口について 
 この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。
事務局
(相談窓口)
担当者:九州大学病院救命救急センター・助教 鳥井ヶ原幸博
連絡先:〔TEL〕092-642-5573(内線5573)
    〔FAX〕092-642-5580
メールアドレス:ped-surg@med.kyushu-u.ac.jp
 
 
【留意事項】
 本研究は九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会において審査・承認後、以下の研究機関の長の許可のもと、実施するものです。
 九州大学病院長 中村 雅史
 
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