内視鏡外科手術

2022年4月1日

臨床

当科では1998年から内視鏡外科手術を開始しました。現在年間500-600例の手術をおこなっていますが、その約 2割にあたる約100-150例が内視鏡外科手術です(右表1)。また腹腔鏡を用いたソケイヘルニアの対側検索など腹腔鏡検査も約50例前後行っています。

表 1 内視鏡手術術式内訳(2019年1月ー2021年12月)

研究

1990年代より小児外科領域へ内視鏡手術が導入され、現在までに小児外科を取り巻く内視鏡手術はますます発展してきています。一方で、小児外科医は一般外科医と比較して内視鏡手術を執り行う機会が少ないことや、小児外科疾患の特徴としての体格の多様性と疾患の稀少性のため、これからの時代を担う若手小児外科医には効率的で有効な内視鏡手術トレーニングが必要であると考えます。

九州大学病院には内視鏡外科手術トレーニングセンターが設けられており、この施設を利用して当科では基本のみならず応用を含めた内視鏡外科手術手技を習得できるよう、また安全で低侵襲な内視鏡手術をより多くの子供たちに提供できるよう、内視鏡手術トレーニングに関する研究をメインに行っています。

客観的技術評価システムを搭載した
小児内視鏡手術・稀少高難度疾患網羅的新規トレーニングシミュレーターシリーズの開発

小児外科疾患の特徴である疾患の稀少性と多様性をカバーすることを主眼として、当研究グループでは疾患特異的トレーニングシミュレーターを開発し、これを用いて手術行程をトレーニングすることができるようにするのみではなく、その行程に一定の客観的な評価基準を設け技術評価を同時に行えるようにして、適切なフィードバックをもたらすことでトレーニングの効率化を図るようにしています。

現在までに、 疾患特異的トレーニングシミュレーターとして食道裂孔縫縮モデル(Ieiri S, et al. Pediatr Surg Int, 2013) 、新生児左横隔膜ヘルニアに対する胸腔鏡下根治術モデル(Obata S, et al. J Laparoendosc Adv Surg Tech 2015)(写真1)、腹腔鏡下Nissen噴門形成術モデル(Jimbo T, et al. Surg Endosc 2017)(写真2)を開発してきました。今後も他疾患に対する内視鏡手術モデルを開発し網羅的疾患トレーニングシミュレーター完成を目指して研究・開発を継続していきます。

前述のように当科では、これまでに疾患特異的シミュレーターにおける技術評価の有用性や短期の手術トレーニングによる効果を報告してきました。一方で外科医育成との観点では、実臨床での後方視的な学習効果の検証は文献的にも報告されていますが、継続的なシミュレータートレーニングによる学習効果は明らかにされていなかったことから、当科で開発した疾患特異的トレーニングシミュレーターを用いた継続学習についてlearning curveに関する検証も行ってきました(Fukuta A. et al. J Laparoendosc Adv Surg Tech 2019) (図1)。本研究では単純な手術時間短縮効果だけでなく左右の鉗子速度や鉗子軌道についても学習効果を検証することでより精度の高い技術教育の確立に努めています。

次世代の技術開発として、我々が開発してきた客観的技術評価システムとAI自動評価技術を組み合わせることで、これまでは経験則で語られていた熟練医の技術を「可視化」し、トレーニング中の修練医の手技をリアルタイムにフィードバックすることで、「いつでも」、「どこでも」精度の高いトレーニングが可能なシステムを開発する取り組みも行っています(写真3)。

写真1 胸腔鏡下根治術モデル
写真2 腹腔鏡下Nissen噴門形成術モデル
図1
写真3

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